「町医日碌」と題して町医者の日記を随時掲載しております。
内科クリニックを開業して多彩な疾患を診ることになりまして、日々勉強に追われる毎日です。専門分化された勤務医の時は全く経験することのなかった病気もこの1年で多数診療することになりましたが、そのひとつに溶連菌感染症があります。
正確には溶血性連鎖球菌と呼ばれ、わたしたち一般内科で診ることが多いのがA群溶連菌による感染症です。これは皮膚の常在菌のひとつですので誰もが保菌しています。こやつが感染症を起こすと、おとなから小児までの咽頭炎、扁桃炎、さらに小児の場合は猩紅熱の原因菌となります。典型的な経過は急なのどの痛みで始まり悪寒を伴う38度〜39度の高熱が続きます。扁桃炎の場合は扁桃腺が赤く腫れ、膿が付着してみえることがあり、適切に治療をしないと気道閉塞から窒息する可能性があります。さらにこの菌が皮膚から浸入すると壊死性筋膜炎という致死率の高い感染症を起こすこともあります(一時人食いバクテリアと報道されたことがあります)
治療は早期に診断してアモキシシリンというペニシリン系の薬剤を十分投薬することになりますが、咽頭を綿棒でぬぐうことで迅速(5分)に診断することが可能です。わたしのクリニックでは昨年の秋頃からみられておりましたが冬から春にかけては毎日1人〜2人陽性になる患者さんが来られており、最近も週に1人くらいみつかっております。幸い全員が投薬によって治癒しております。
また、小児においてA群溶連菌の厄介なことは、一旦治癒したと思われても数週間後に急性リウマチ熱(成人後の心臓弁膜症の原因)や急性糸球体腎炎を発症することがありますので治ってからも注意が必要になります。
と言うわけで、急なのどの痛み、高熱、さむけのような症状がありましたら早めに受診してください。
著者:みむら内科クリニック 院長 三村 純(みむら じゅん)