「町医日碌」と題して町医者の日記を随時掲載しております。
私が研修医になった1987年当時、A型肝炎とB型肝炎は診断が可能でした。
A型肝炎は慢性化することなく治癒します(劇症を除き)ので、慢性肝炎で診断が可能だったのはB型肝炎だけでした。それ以外の慢性肝炎は非A非Bの慢性肝炎と呼んでいました。
当時B型肝炎に有効な治療はなく、慢性肝炎から40歳〜50歳代で肝硬変、肝細胞癌で亡くなっていく人を見送ることしかできませんでした(肝細胞癌はもちろん治療後ですが)。
非A非Bの慢性肝炎では、そもそもその正体がわからないのでこれもまた有効な治療法がありませんでした。
1990年アメリカでC型肝炎の診断キットが開発され、すぐに日本にも導入されましたが、その頃外来をしていてそれまでは非A非Bの慢性肝炎だった患者さんのほぼ全員がC型肝炎であったことに驚いた覚えがあります。
さて、診断はついても有効な治療がない時代はその後も続きましたが、B型肝炎は2000年頃に核酸アナログ製剤が開発されウイルスの排除はできなくても増殖を劇的に抑えることで慢性肝炎から肝硬変に至ることが激減しました。
C型肝炎はインターフェロン中心の治療が続きましたがウイルスに直接作用する経口の薬剤の開発、実用化が2010年頃から進み、今では95%以上の患者さんが治癒する時代となりました。その結果B型、C型肝炎が原因であった肝細胞癌も近年は減少が続いています。現在ではこれらの肝炎に輸血で感染することも極めてまれなことになっており新規の発生は今後も減ってゆくことが予想されます。
ただ、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように肝炎がかなり進行するまで本人に症状がないことが普通です。
日本ではB型、C型とも現在尚100万人以上の人が感染しているとされ、本人が気づいていないケースはまだまだたくさんあると思われます。
神戸市では市民に対してB型、C型肝炎ウイルスの検査を無料で行っており、当クリニックは検査施行の指定医療機関になっていますので検査をご希望される方は一度ご相談ください。また、私は肝臓専門医の資格を有しておりますので公費補助に基づく肝炎治療が全て可能です。
著者:みむら内科クリニック 院長 三村 純(みむら じゅん)