「町医日碌」と題して町医者の日記を随時掲載しております。
白い巨塔というドラマをご記憶でしょうか。ただし、唐沢寿明と江口洋介が主演した分ではなく、田宮二郎と山本学が財前五郎と里見脩二を演じた古い方です。前者も良い出来でしたが、私の様に両方をリアルタイムに観てきた者には後者の方が圧倒的に存在感があるように思いました。
さて、その古い方で里見先生が使用していた胃カメラはファイバースコープと申しましてグラスファイバーをたくさん束ねて先端の画像を接眼レンズから観察するものでした。
当時は内視鏡の検査中、医師は片目をずっと接眼レンズに近づけておく必要がありました。
そしてスコープを長くして大腸内の観察も可能になりましたが、胃と違い大腸は長い上に屈曲も多く、深部までの挿入が難しいためにレントゲン透視下で行っておりました。スコープ自体も現在のものと比べればとても堅くて1回の検査に30分から1時間近くかかることが普通で患者さんの苦痛は相当なものでした。
1990年代に入り、CCDが小型化しスコープ先端に取り付けられるようになるとグラスファイバーは不要になりスコープの材質もどんどん改良され、検査に伴う苦痛は激減しました。
30分も40分も放射線被曝しながらお腹がパンパンに張って、難行苦行のような検査が、大きなモニター画像を見ながら両手で操作できる電子スコープの登場と、観察時に腸内へ送る空気に、体内での吸収が早い2酸化炭素が使えるようになったことでかなり楽な検査に変わったのです。
私自身もこれまでに2回検査を受けましたが、短時間の痛みのみであまり辛くは感じませんでした。
しかしながら現在でも大腸内視鏡検査は苦痛を伴うことはありまして、原因としては
1.医師の技量が未熟(つまり下手)
2.大腸がとても長い。
3.大腸の走行が通常と大きく異なる。
4.開腹手術を受けたことがある。
等があげられますが、初回の検査で事前に患者さんの苦痛を予測することは困難なのが現状です。
病院によっては全ての患者さんに、完全に眠ってしまう鎮静剤を使用しているところもありますが、大腸内視鏡検査は胃の検査に比べて時間がかかりますので鎮静に伴う偶発症のリスクが高まります。
このことから“みむら内科クリニック”では大腸内視鏡検査では鎮静剤を使用しておりませんが、私の約30年、1万例以上の経験で挿入に伴う苦痛で検査を中止した経験は平均して100人に1人くらいです。
また4月に開業させていただいてから130件の大腸内視鏡検査を施行しましたが途中で断念した方はこれまでに1人のみで8割以上の方は軽い痛みのみで、ほぼ10分以内に大腸の一番奥までに挿入可能でした。
多くの患者さんに「思っていたよりも楽だった」と感想をいただいております。
と言うわけで、「大腸内視鏡検査は痛そう、怖そう」とお考えの方は一度ご相談にお越しください。
著者:みむら内科クリニック 院長 三村 純(みむら じゅん)