「町医日碌」と題して町医者の日記を随時掲載しております。
近勤務医の頃夜間や休日でわたしは内科の当直をしていました。
内科と言ってもわたしの専門の消化器内科をはじめ循環器内科や呼吸器内科等と専門にわかれておりまして、病院全体で何千人もいる通院中の患者さんで具合が悪くなった場合はわたしの専門外の患者さんでも受け入れる、診療する責任が病院としてあると考えておりました。同様に他の病院も通院中の患者さんには時間外でも対応の責任が原則としてあると考えておりました。
ある日の午後診で50歳代の方が、胸の不快感と息苦しさを訴えて初診で来院されました。心電図とレントゲンで不整脈から心不全を起こしかけていると考えました。
この方は10年近くA病院に高血圧や他の疾患で通院中であり何度か入院歴もありましたがお家が近所なのでこの日はわたしのクリニックを受診されたのでした。
状態から入院も必要かもしれないと考えましたので通院中のA病院に連絡をすることにしました。A病院のホームページには「24時間、365日救急対応します」と書かれておりますので当然通院中の人にも対応されるんだろうと思ったのですが電話をたらい回しにされたあげく当直医は「うちの病院でなにをしてほしいのか」と全く受け入れようとしません。
いやいや、ずっとあなたの病院で通院、治療中の方ですから診察くらいしてくださいとお願いしても、そんなことは知ったことではないという態度でお話になりません。
この医師と話しても無駄と考えましたが患者さんとご家族と相談のうえやはり通院中のA病院に行ってもらうことになりました。その後のことはわかりません。
クリニックを開業してから他の病院を通院中で具合が悪くなって受診される方が多く来られます。
なかにはその日のうちに処置や入院が必要なケースもあり、救急対応のある病院はたいていの場合受け入れてもらえるのですがA病院のような対応もあり、状態が急を要する場合はかなり困ります。
A病院にも事情があるのでしょうが、この病院が得意とする疾患の患者が来てもわたしは絶対に紹介することはないと思ってしまいました。
実はこのA病院わたしの親戚が、はるか昔ですがお世話になったこともあり、いい病院と思っていただけに残念でした。
著者:みむら内科クリニック 院長 三村 純(みむら じゅん)