「町医日碌」と題して町医者の日記を随時掲載しております。
わたし、健啖家と言えば聞こえがよろしいんですが子どもの頃から自他共に認める大食いでして、一人暮らしをしていた学生の頃から安くてたくさん食べられるお店をひたすら探し続けておりました。約40年前頃の東京に昼間2時間限定でステーキ食べ放題のお店がありましておなじく大食いの連れと二人で300gのステーキを5枚ずつ、つまり1.5kg食べたこともありました(その店はすぐつぶれました)なんせ質より量はもちろんで、当時は器がどんなに綺麗でも量のすくない懐石料理なんか誰が喰うか、器より中身じゃと思っておりましたが馬齢を重ねるにつれて和食の美味しさもだんだんわかるようになってまいりまして、本格的な懐石料理も美味しいと思えるようになりました。ただ、旬の素材を使い綺麗にまとまった懐石料理というものは三宮あたりではお一人様10000円以上することが普通でして、安くて美味いもの研究家としてはここに紹介することは憚られます。
ところがあるんですよ。コスパ最高の和食、懐石料理が。
明石市は太寺というまちにある「侘助(わびすけ)」がそのお店です。数年前から通うようになりましたが料理が美味しいのはもちろん、それぞれの器もまた素材に合うように工夫されてでてまいります。
ではこの秋のメニューを紹介しましょう。
まずは前菜(先付)が、子もち鮎の甘露煮、銀杏の松葉串、柿の白か掛け、 鰆の煮凝り、帆立の握り鮨となんと5つもありまして最初からそれぞれ倍ずつほしくなるような美味しさです。 | |
次にお椀(煮物椀)ですが、秋はもちろん松茸土瓶蒸し、入ってる松茸はそれほど多くはないのになんでこんなに香りが良いのかと感動の一品。 他の季節にも、その時の旬の素材が使われますが出汁をしっかりとっているので変わらぬ美味しさが味わえます。 |
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そしてお造りは、本鮪、紋甲烏賊、間八、鯛と毎回だいたい同じメニューですが、明石の朝どれの新鮮なお刺身がいただけます。 | |
つぎに焚き合わせが、飛龍頭(ひろうす)と秋茄子の焚き合わせ、なんですが飛龍頭とはがんもどきのことらしく、茄子と絶妙のコラボというべき味わいです。 | |
いぶお腹もふくれてきたところでこの日の焼き物が和牛ステーキ。 日によってすき焼きか、しゃぶしゃぶになるのですが、どれでもジューシーで実に柔らかいお肉がいただけます。 |
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そして揚げ物は天ぷらでして海老とベーコンの磯辺巻き、丸十(さつまいも)の生麩巻に舞茸とそれぞれ梅塩か天つゆどちらでも味わえます。 舞茸の歯ごたえと海老の風味に梅塩が絶品。 |
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もうコースは終わりかと思いきや、なんとここで小鉢が登場。 生湯葉と卵豆腐のジュレという不思議な組み合わせなんですが、これがまたしても絶妙の味付けで、量的にも丁度よい加減でぺろりと食べてしまいました。 |
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そして料理のしめはご飯ものですがこの日は鮭と牛蒡の炊き込みご飯と小さなお吸い物。炊き込みご飯は薄味ながら、いくらと一緒にいただくと良い按配になるのでした。ご飯ものも季節によってかわります。 | |
もうお腹がいっぱいになりまして最後はデザート、バニラのパンナコッタと梨でお開きとなりました。 |
というわけで上手に写真は撮れていませんが、清潔なお店、接客も丁寧で器も料理も美しく、そして美味、しかもこんなにいっぱいいただけて5800円(ついこないだまで5500円でしたが昨今の物価高ですからしょうがないですね)という破格のお値段です。ちゃんとした和食、懐石を三宮の半額で食べたいと思う時お勧めのお店です。
著者:みむら内科クリニック 院長 三村 純(みむら じゅん)