「町医日碌」と題して町医者の日記を随時掲載しております。
水のような下痢になった、と訴える患者さんがよく来られます。多くはウイルス性の感染性胃腸炎でノロウイルスやロタウイルスのことが多く、家庭内で感染が続くこともありますが、軽症で済むことが多いです。
これに対して細菌性の腸炎の場合は症状が激しく、39度前後の高熱に強い腹痛を伴うことがあります。9月から立て続けに20歳代〜40歳代の若い人で細菌性の腸炎と思われる患者さんが来られました。よくお話を伺うと共通していたことは発症の1週間以内に鶏の刺身を食べていた、ということでした。それも居酒屋等のお店で出されたものでした。
ニワトリやウシ、ヒツジの腸管にはカンピロバクターという菌が常在しています。これを人が摂取することでカンピロバクター腸炎という、日本の食中毒で最も件数の多い細菌性食中毒を起こします。潜伏期間は3日〜8日と言われ、高齢者や小児で重症化すると命に関わることもあります。
また治ったあとも数ヶ月してからギランバレー症候群という全身の筋肉が麻痺する合併症を起こすこともあります。
当クリニックに来られた方の一人は病院へ紹介して入院させてもらいましたが便の検査からやはりカンピロバクターが検出されたと報告をうけました。
これから忘年会シーズンですが、鶏の刺身やユッケ等、生肉には十分ご注意ください。
ちなみに筆者は、これらの生肉はどんなに信頼のおけるお店でも絶対に食べません。唯一で最も有効な予防法です。
著者:みむら内科クリニック 院長 三村 純(みむら じゅん)